第98章 初めての共闘
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大体必要なものを調達し、水琴は船へと急ぐ。
時間を見れば約束ちょうど。
もうエースはいるだろうかと見えてきた船に目をやった。
「……なに?」
なんだか騒がしい。
「なんだ、こんな程度かよ。つまんねェな」
「エース?!」
船の甲板には明らかに賞金首などとは異なる見知らぬ男達が折り重なるように倒れ伏していた。その一人を踏みつけているエースを見て思わず叫ぶ。
「お。遅かったな」
「遅かったな、じゃない!何これどういうこと?!」
「こいつらが喧嘩売ってきたから買った」
「至極シンプルな回答ありがとう」
約束したのに、と項垂れれば名乗ってはねェぞと返された。そういう問題ではない。
「それに売られた喧嘩は買うのが男だろ」
「もういいです……」
食料はもう調達したようだし、面倒になる前に早く町を出てしまおうと水琴は甲板へ飛び乗る。
ぽいぽいと男達を隣の船へ放り投げるエースを見守っていると、その船の扉がガチャリと開いた。
てっきり全員ノしてしまったのだと思っていた水琴はぎょっと目を開く。
「__随分と部下を可愛がってくれたようだな」
現れたのは身なりの良い優男だった。
顔だけ見れば美系の部類に入るだろう。透き通るような白い肌に南国の海を思わせるエメラルドグリーンの髪を肩まで遊ばせ、ゆったりとした着心地の良さそうなシャツを身にまとう立ち姿は一見モデルと言っても通用しそうだ。涼し気な青い瞳に見つめられただけで落ちる女性も少なくないだろう。
しかし一歩足を踏み出すだけで流れ落ちる髪筋を撫で上げる様といい、腕を組んだ時の指先の伸ばし方といい、所作の一つ一つにナルシストっぽい様子を感じ水琴は少し後ずさる。