第98章 初めての共闘
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「食料はこんくらいで良いな」
保存できる位の食料を船へ積み込み、エースは手を払う。
約束の時間まではまだ半分ほどある。特に町で用もないエースは昼寝でもして待っていようと甲板にごろりと横になった。
動けるようになったとはいえ、まだ腹に酒が残っている気がする。
もう二度とアイツと呑み比べはしないと心に決め、エースは一眠りするために目を閉じた。
「おい、そこの小船!」
「………んが?」
しばらくして熟睡するエースの耳に怒鳴り声が届き、目を覚ます。
気分はだいぶすっきりしていた。
のそりと起き上がり声のする方を見れば、奇妙な形の船が目に入った。風で動く帆船ではなく、燃料を動力とした小型船だ。
そこの甲板に数人の男が立ち並び、エースを睨みつけている。
「なんだ。何か用か」
「お前がそこにいては船が停められぬ!早く退かぬか!」
「あァ……?」
視線を向ければ確かにエースの船が向こうの船の針路の邪魔をしている。
しかし、他にも船を止める場所はいくらでもある。わざわざエースの船をどかす必要はない。
「別に他にも停める場所はあるだろ。そっち行けよ」
「ラディッツ様はその向こうの場所にしか船をお停め出来ないのだ!」
「なんだそりゃ。ダセェ」
「ダサいとはなんだダサいとは!」
「じゃあ停められる奴が船操作してやりゃいいだろ」
「ラディッツ様はご自分での操作をご希望だ!」
「なんだそりゃ。めんどくせェ」
「めんどくさいとはなんだめんどくさいとは!」
変な奴らに捕まった、とエースはげんなりとする。
「大体貴様!ラディッツ様を知らないとは一体どういうことだ!」
「ラディッツ様はこの町の領主の息子であらせられるぞ!」
「おれは海__買い出しに来たただの旅行客だ。ラビットだかプリッツだか知らねェが、関係ねェな」
海賊と言いそうになり、約束をした事を思い出しぐっと堪える。
「この町の領主の息子に向かって、何たる不敬な!」
「旅行客と言えど容赦せん!」
「……へェ。やるか?」
獲物を構える男達に対しにやりと笑う。
少しは暇つぶしになりそうだ。