第98章 初めての共闘
「エース大丈夫?」
「お前、詐欺だろ……」
ワクだなんて聞いてねェ、とぐったりとカウンターに突っ伏すエースにそっと水を差し出す。その隣には大量のジョッキが積まれていた。もちろん全て水琴が飲んだものである。
「自分に有利な勝負を仕掛けるのも立派な戦法だよね」
「だからってこれは卑怯だろ。自分の意見通す気満々じゃねェか」
「へー。エースは自分で乗った勝負に負けたからって卑怯なんて言うの?」
見た目で弱そうって決めつけた自分の落ち度なのに?と続ければ図星だったのかうぐっ、と口を噤む。
「エース。内容はどうあれ、これは海賊同士の神聖な勝負」
水琴は厳かな口調でエースを見つめる。
「勝負で決めた約束は、守らなければならない。約束を破る海賊は、かっこ悪い」
「かっこ悪い?!」
「そう。かっこ悪い。エースはかっこ悪い海賊になりたいわけ?」
「んなわけねェだろ!」
「なら、約束は守らないとね」
ね?と笑顔で念押しすれば渋々ながらも頷いた。
勝った。
エースがようやく活動できるようになる頃には太陽はてっぺんから少し西へ傾いていた。
早く買い出しをしないと出航してもいくらかしないうちに夜になってしまうだろう。
食料の前に日用品を揃えたいとエースに言えばそれなら別行動をしようと提案された。
「今から一時間後に船で落ち合うのでいいか」
「うん、大丈夫。……ねぇ、分かってると思うけど海賊だとはくれぐれも__」
「分かってるって。約束しただろ」
お金を分担し、通りで別れようとするエースに念押しするようにそう声を掛ければ煩そうに手を振られ行ってしまった。
「……平気だよね」
小さくなっていく背中を見送る。
これが二十歳のエースだったら安心して任せられるのだが、十七歳のエースでは少し……いや、かなり不安だ。
「__何事もないといいけど」