第15章 それぞれの想い
湧き上がる感情のままに言葉を吐き出した喉が痛い。
痛いのは本当に喉だろうか。もうよく分からない。
「……“大丈夫”?」
黙って話を聞いていたエースが口を開いた。
押し殺した声だというのに、その呟きは私までしっかり届いた。
「お前なァ!!ふざけんなよ!!!」
エースが、切れた。
当然だろう。せっかく助けに来たのにそんなこと言われたら誰だって切れる。
「大丈夫、大丈夫ってお前なァ!ほんとに大丈夫な奴は、そんな顔しねェんだよ!!」
そんな顔って、どんな顔だ。
一体私がどんな顔をしてるっていうんだ。
「心の底からそう思ってるんなら、今にも泣きそうな顔してるんじゃねェ!!!」
言われて、気付く。
私は、そんな顔をしてるのか。
怒っているつもりだった。
あんなやつ、いなくなって清々すると思われてもいい。
彼らがこの先を迷いなく進んでいけるよう、突き放しているつもりだったのに。
「モビーでだってそうだ!!いつもいつも一人で抱え込んで、潰れそうになりながらじっと我慢して!!
辛いなら辛いって言やァいいだろ!!そんなにおれ達は頼りないか!!」
彼らが頼りないか?
そんなわけない。
だからこそ、困るのだ。
「……そんなわけ、ないじゃない」
きっとエースを睨む。
「そんなわけないでしょう?!頼りになるから!いつもいつもみんなは優しいから!だから、言えないんじゃない…!」
私が助けてと言えば、きっと彼らは助けてくれる。
障害などものともせず、手を差し出してくれる。
「でも、私は居候で…!助けてもらっても、私は何も出来なくてっ!
ただ迷惑を掛けるだけなら、私なんてその船にいる必要ないじゃない!!」
みんなともっと一緒にいたい。
もっと世界を見たい。
けれど、異世界の民の血が、もしもいつか彼らの道を狭めてしまうとしたら。
いらぬ騒動に、巻き込んでしまうとしたら。
私はきっと、死ぬほど後悔する。