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【ONEPIECE】恵風は海を渡る【エース】

第15章 それぞれの想い






 「…私、帰りたいんです」

 ぽつりと弱い声が漏れる。

 「言われてることは分かります…でも、嫌です。嫌なんです…」


 異世界の民なんて、知らない。

 私は、ただの、人間だ。


 帰りたい。帰してほしい。

 ここにはいない、優しく強いみんなの顔が浮かんだ。



 「血が必要なら、必要なだけ献血でも何でもしてください。 
  お願いです。私を、帰して…」
 「……君は、」

 ドーランが続きを口にする前に、基地に巨大な爆発音が響いた。

 「なんだ!!」

 ドーランが窓へ駆け寄り外を見れば、天まで立ち上る巨大な炎。



 「エース、さん……」


 どうして、と呆然と呟く。

 そして知る。


 来てしまったのだ。彼は。


 何も告げず、一方的に別れた私を追って。


 ここまで、来てしまった。



 「おい!!」


 窓を開ける。
 ドーランが制止しようとするがその前に水琴はバルコニーへと出た。

 

 「エースさん!!」

 遥か下に見える姿に声を掛ける。
 そこにはいつもの誇りを背負ったエースと、なぜかマルコまでいた。

 どうして、と思うが目が合った瞬間その疑問は吹き飛んだ。

 生まれたのは、怒り。



 「お、水琴!」
 「…どうして来たんですか!!」


 すぅ、と息を吸い怒鳴る。
 こちらに向かって手を振っていたエースがぴたりと動きを止める。


 「言ったじゃないですか…私は、帰るって。
 もう大丈夫って!!」


 脳裏にあのシーンがよぎる。


 大事な弟を庇い、赤犬に胸を貫かれゆっくりと倒れる姿。


 お願いだから。


 この世界のあなたまで、同じようにならないで。




 決死の思いで、私はここまで来たのに。



 あなたがここへ来たら、意味がないのに。
 
 


 
 「もう、放っておいてください!!」




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