第97章 17歳エースとの出逢い
差し出した手をエースが決まりだな、と叩く。
「そうと決まればちょっと待ってろ」
エースの船へ戻るかと思えばその足は船室へと向かう。
「どこ行くの?」
「すぐ戻る。そこで待ってろ」
それだけ言い残し中へと消えていく。
エースの言いつけ通り水琴はぺたんと甲板に座ったままエースを待った。
くぁーくぁーとカモメが頭上を通り過ぎていく。
待つこと数分。
エースが大きな袋を背に戻ってきた。
「……エース船長、それは?」
「お宝。結構ため込んでやがった」
上々だな、とエースは得意げににんまりと笑う。その顔はまさに海賊だ。
「ぼさぼさしてんな。早く行くぞ」
傍に付けていた小ぶりの船へ移るエースを水琴は慌てて追った。
***
ルフィと別れ、ドーン島を出て五日。
見かけた海賊船を景気づけに襲おうと、船を寄せ潜入した先で見たのは倒れ伏す海賊たちと、甲板に座り込む一人の女だった。
帰り道が分からないと、寂しそうに笑う女が何故か気になった。
普段なら、こんな怪しい状況で遭遇した奴なんて「そうか、頑張れよ」の一言で済ませる。
しかし、何故かその女のそんな表情は見ていたくなくて。
一瞬ずっと昔に同じような表情を見たことがあるような錯覚に陥り、思わずエースは「仲間になれ」と誘っていた。
自分でも驚く。
しかし、言葉にしてみればそれは良い案のように思え、困惑する女を押し切る形で仲間にした。
水琴、と名乗った女は待ってろと言ったエースの言葉通り甲板でじっと待っていた。
馬鹿正直にもほどがあるだろ。
自分で言うのもなんだが、会ったばかりの海賊になるという男を簡単に信用しすぎじゃないかこいつ。
早く来いと呼び掛ければ慌てて寄ってくる。