第97章 17歳エースとの出逢い
きらりと反射した光が水琴の目をついた。目を細めその出所を探る。
視線を向けた先にはエースがいた。
その腕に巻き付いているブレスレットの金具が光を反射したのだろう。
__そのブレスレットには、見覚えがある。
あれは確かまだサボがいた頃。
兄弟になった証にと、三人分のミサンガを編んだことがあった。
当時の彼らに丁度良く作られたはずのそれは金具で長さを伸ばされ、逞しくなったその腕にも余裕をもって収まっていた。
わざわざ金具で補強してまで、大事に持っていてくれたんだろうか。
忘れてしまってからも、ずっと。
__記憶は消えても、想いは消えねェ。
元の世界に帰ると決めた日、親父さんが言ってくれた言葉を思い出す。
__心に、身体に刻み付けた想いはそう簡単に消えやしねェ。
同じように生きる世界が異なろうと、俺たちが家族だという絆は消えたりなんかしねェ
じっとエースを見つめる。
なんだよ、と眉をひそめるエースが見返してきた。
「……私、仲間になってもいいんですか」
「おれが誘ったんだから良いに決まってんだろ。男に二言はねェよ」
「会ったばかりの、よく分からない女なのに?裏切るかもしれませんよ」
「裏切るつもりなら覚悟しとけよ。そん時は返り討ちにしてやる」
あぁ。
記憶がなくても、彼は“エース”だ。
昔と同じやりとりに頬が上がる。
「よろしく、船長!」
難しく考えるのはやめよう。
何故かはわからないが、私は今ここにいる。
それは時代が許したということだ。
なら、時代が許してくれるその日まで。
私は、私のやりたいようにやる。
散々振り回してくれるんだから、それ位は許してもらえるだろう。