第97章 17歳エースとの出逢い
「あの、ここってどこですか?」
「それもわかんねェのか?」
「迷子なもので……一体どの海でしょうか」
「そこからかよ?!」
迷子って言っても限度があるだろ!とエースに突っ込まれる。
なんだかこのつんけんした様子は少し懐かしい。
「ここは東の海だ。ドーン島から南に五日の海域だな。分かるか?」
東の海。ドーン島。間違いない。
どうやら今回はエースの旅立ちの時間軸まで飛んでしまったらしい。
遠い目をする水琴の目の前でエースがひらひらと手を振る。
「失礼しました。えっと、私は水琴といいます。あなたは?」
こうやってエースに自己紹介するのは何度目だろう。
小さなエースにした時にはなかった胸の痛みがつきつきとこみあげてくるのを感じる。
それは目の前のエースが見知った姿により近いからだろうか。生まれた寂しさを押し隠し水琴は首を傾げる。
「おれはエースだ。で、お前どうすんだ。この船使いたいなら好きにしろ。おれはいらねェ」
「__船だけあっても、しょうがないんですよね」
「あ……?」
帰り道、分からないから。
見知った顔を見て一度は引っ込んだ涙が再び溢れそうになる。
ここが過去だということは分かったが、どうすれば帰れるのかは見当もつかない。
エースやルフィの子ども時代に飛んでしまった時も、ただ待つしか出来なかった。
今回はあの島みたいに待つ場所もない。
今もまだ島にいるであろうルフィの元へ行こうかと思ったが、エースが忘れているということは他の面々も忘れている可能性が高い。
ルフィはともかく他に怪しまれるだけだろう。
それにあの島から出なかった水琴には正確な島の位置が分からない。
八方塞がりな状況にしばし思考を放棄し俯く。