第97章 17歳エースとの出逢い
「__へェ。こりゃ驚いた」
ふと水琴以外起きているはずのない甲板に声が聞こえた。
ゆっくりと振り返る。
「………え、」
そこに立っていたのは、紛れもない。
ポートガス・D・エースその人だった。
驚き言葉も出ない水琴に気付くこともなく、エースは甲板の様子を感心したように見回していた。
「エー__ッ」
呼び掛けようとして、違和感に気付く。
水琴が知っているよりも幼い顔つき。トレードマークである鮮やかなテンガロンハットも、赤い首飾りもなく、普段は嫌がるシャツを羽織っている。
……もしかして、ここは。
「海賊船が見えたからちょっくら暴れてやろうかと思ったら、まさか女に先を越されるなん__?!」
水琴へと視線を向けたエースがぎょっと目を見開く。
「お前、何泣いてんだよ!」
「……え」
エースの言葉にさっきまで泣いていたことを思い出す。
既に涙は止まっていたが、痕はくっきりと残っているだろう。ごしごしと袖で拭う。
「あ、お騒がせしました」
「なんなんだ、お前……」
「えっと……その」
「なんだよ」
「__いや、実は手違いで海賊船に乗り込んじゃって……」
「手違い?間抜けだな」
いまだ甲板に座り込んでいる水琴の横を通り過ぎ、倒れている海賊たちを適当に縛り上げていく。
その様子を水琴は黙って眺めていた。
どうやらこのエースは水琴のことを知らないらしい。
水琴の見た目は変わらないため、分からないということはないだろう。
となると時の修正とか何とかで忘れてしまったのか。
短くない時間を一緒に過ごした自負のある水琴にとって何の反応ももらえないというのはいささか以上に寂しくショックの大きい事実だった。
気を取り直してエースの背中へと問いかける。