第15章 それぞれの想い
***
「あぁ、おかえり」
海兵に連れられてきた一室。
そこにはベルクと、もう一人先客がいた。
「…ベルク、彼女がそうか」
海軍の偉い人だろうか。立派な服を着たその人はじ、と水琴を見つめている。
その男がこの基地の大佐であることを水琴は知らない。
「あぁ。念願の異世界の民だ」
「__そうか」
「私は塔で準備をしてくる。お前は処理が済んだら彼女を連れて来い」
頼むぞ大佐、と声を掛けベルクは部屋を出て行く。
「……あの」
「ドーラン・セリクだ。掛けろ」
示された椅子に座る。
「ドーランさん。あなたは、Dr.ベルクが何をしようとしているのか知っているんですか」
まだこの男の方が話が通じそうだと思った水琴は静かに問いかける。
「知っている」
「じゃあなんで、協力するんですか。海軍は、平和を守るんでしょう?」
「平和を守るからこそ、だ」
どういうことですか?と首を傾げれば黙っていた大佐は口を開く。
「お前たち異世界の民の血には、不思議な力がある。
一つはどんな病もたちどころに癒す万能薬。
もう一つは、悪魔の実の力を最大限に引き出し、向上させることだ」
「え……」
何それ。初耳だ。
しかしそれを聞いて思い出す。
あれは確かこの世界に来て初めて上陸した島でのこと。
エースが私の血を舐めた後、手加減するつもりで発動した能力がものすごい威力を発揮したことを。
「今は伝説として誰も信じていないが、この話が世間に知れればどうなると思う」
「どうって……」
「間違いなく、戦争が起こる。
…お前たち異世界の民を奪い合う、能力者同士の戦争が」
規模の大きい話に視界がくらくらする。
「それに、あいつは確かに狂ってはいるが頭はいい。君の血から効率的に万能薬が作成できれば、多くの人民が救われるだろう」
「それは……」
「君には、辛い思いをさせる」
静かにそう言われれば、黙るしかない。
彼の言っていることは、間違ってはいない。
私の血を研究することで多くの人が助かるなら、私は協力するべきで。
私の血がいらぬ争いを生んでしまうなら、海軍で保護されるのが一番いい。
でも、それはあくまで「彼ら側の正義」だ。