第15章 それぞれの想い
マルコが解散を告げる。それに名残惜しそうにクルーが散っていく。
「………」
「エース」
最後まで甲板に立ちつくすエースにサッチはそっと声を掛けた。
「しょうがないけどさ。水琴ちゃんには水琴ちゃんの人生があるんだよ」
「………」
「彼女の幸せを祈ってやろうぜ」
「………」
サッチの言葉にエースは何も反応を返さない。
こりゃしばらくは無理だな、とサッチは黙ってその場を離れようとした。
「サッチ隊長!!」
その背に部下の声が届き、サッチは歩みを止め振り返る。
「どうした?」
ぜぇはぁと息を切らせてるこいつは確か調達組だったはずだ。
たまに甲板の隅で水琴と洗濯をしていたことを思い出す。
「い、今水琴が…!」
「あァ、帰る方法が見つかったんだとよ」
きっとウラ街で見かけたんだろう。別れの挨拶が出来なくて残念だったな、と思っていると予想外の言葉が飛び出した。
「いや、水琴が海軍に連れられて…!なんか物々しい雰囲気で海軍基地の方に……!」
「……なんだと?」
先程水琴は異世界を研究している人がいると言っていた。
海軍なんて話は一言も出ていない。
相手が海軍だったから言いにくかったのだろうか。
「どんな様子だったんだ?」
エースもおかしいと感じたのか、クルーへと詰め寄る。
「それが、まるで連行されるようで水琴の四方を囲んで…
海兵もすげェ武装だし、俺はてっきり海賊だってばれて捕まったのかと…」
違うのか?と隊長二人を見返すクルーの言葉に嫌な予感を覚える。
「……海軍っていやァ」
少し離れた場所で様子を見守っていたイゾウがゆっくり近づいてくる。
「ここの大佐はオモテじゃすごい人気だが、ウラじゃおかしな科学者と繋がってたりと妙な噂があるらしいなァ」
「それ、どういうことだ…?」
「なァエースよ」
イゾウの切れ長の目がエースを射抜く。
「異世界の民について、俺たちはよく知らねェ」
「だが、もし何か大きな秘密があるとしたら?」