第15章 それぞれの想い
甲板に戻ればそこには話を聞いたクルーが集まっていた。
「水琴」
「ジョズさん」
「話は聞いた。帰る方法が分かって、よかったな」
「はい、ありがとうございます」
「向こうに帰っても、我々のことは忘れないでくれよ」
「ビスタさん、もちろんです」
オモテ街まで送ろうか、というクルーの誘いを断る。
「すぐそこまで迎えが来ているので大丈夫です」
お世話になった皆を見まわし、水琴は笑う。
「今までありがとうございました。みなさんの航海がこれからも無事に続くように祈ってます」
そして、私は船を降りた。
一度も振り返ることなく路地を進む。
足は震えていなかっただろうか。
視線は泳いでいなかっただろうか。
__ちゃんと、元の世界に帰る少女を、演じられただろうか。
ぽたりと滴が頬を伝う。
立ち止り、静かに頬を拭う私の前に海兵たちが現れる。
「……用は済んだか」
「えぇ、お陰様で」
水琴の感傷を全く気に掛けることなく、海兵たちは水琴の周辺を囲む。
「これから基地へ連行する」
これから自分は一体どうなるのだろうか。
不安と恐怖を悟らせぬように、上辺だけは気丈に保ち、私は足を動かした。
***
「なんで行かせたんだよマルコ!」
「水琴は元々帰る方法を探してたんだ。見つかったならこの船を降りる。妥当だろうがよい」
「明らかに様子がおかしかったじゃねェか!」
水琴が去った後の甲板でエースがマルコに食ってかかっていた。
その剣幕ときたら。よく黙って水琴を送り出せたものだとサッチは半ば感心してエースの背中を見つめる。
そんなエースの剣幕も冷静に流し、マルコは冷めた目でエースをじっと見下ろしていた。
「そうだとしても、あいつは何も告げなかった。水琴が決めたことだよい。俺たちがどうこう言うことじゃねェ」
「そうかも、しれねェけど…」
様子がおかしいのは明らかだった。
ではなぜ何も言ってくれなかったのか。
今となっては確認する術もない。
「さァ、調達組もそろそろ戻る。俺たちも出航するよい」