第2章 始まり
「すいません。確か施設にいたと思うんですけど、ここはどこですか?」
「施設?」
「はい、教会の横の」
「教会なんてこの島にはないぞ。あー、えっと…」
律儀に答えてくれた男性は困ったように言葉を濁す。
島?教会がない?
一体どういうことだと混乱する私の頭を先ほどのリーゼントの人がぽんと叩いた。
「あー、なんだ。混乱してるのはよくわかる…とりあえずエース、そこから出してやったら?」
風邪ひいちゃうだろ、と言われ井戸に浸かったままだったのを思い出す。
確かに少し寒い。
…ん?
あれ、今エースっていった?
エースって、あの『エース』?
「それもそうだな」
エースと呼ばれた男性は手首をつかんでいた手ともう片方の手を私の両脇に持っていき、一気に持ち上げた。
水も吸って大分重いだろうに、軽々と持ち上げられ驚く。どんだけ力もちなんだ!
「ほら、大丈夫か?」
危なげもなく地面に下ろすと、『エース』はぽんと私の頭に手をやった。
それだけでも二人の身長差がだいぶあることに気付く。
「あ、大丈夫です、えっと…その…」
「怖がらせて悪かったな、おれはエース。お前は?」
おろおろとする私を安心させるかのようにそのままぽんぽんと頭を撫でられる。
「あ、水琴です」
「そっか。水琴、ちょっと我慢しろよ」
そう言われ何を?と問う前にぼっ!と目の前に炎が揺れた。熱気が頬を撫でる。
しかし火傷をするほどではなく、その熱さも一瞬で、何が起こったか分からず目を白黒とさせる。
「ほら、これでもう寒くないだろ?」
「は、あの、いや、え??」
気付くとずぶぬれだった服は見事に乾いていた。
メラメラの実の力だ、と気付いた時には目の前の人物があのエースなのだと納得せざるを得なくなった。
ワンピースの主人公、ルフィの兄であり、白ひげ海賊団の二番隊隊長。
火拳のエース。
でも、どうして彼がここに?