第2章 始まり
「まー、あれだ。突然だが、どうやら異世界から引っ張りだしちまったみたいだな」
悪ィ、と困ったように言われ、更に訳が分からなくなる。
異世界?一体何の事だ?
聴きなれない単語にぽかんとするが、落ちたはずの井戸から出たはずなのに教会も施設もなく、周囲には知らない大勢の男性。明らかに日本とは違う雰囲気。
あぁ、彼が日本にいるのではない。
私が異世界にいるのだと、すとんと納得してしまって。
「エース、いくらなんでもその説明じゃ分からないって。水琴ちゃんも混乱しちゃってるだろ」
「いや、って言ってもよう」
「驚かせて悪かったね、水琴ちゃん。実は……って、」
振り向いたリーゼントの人が見たのは、再び井戸に飛び込もうと足を掛けている私の姿で。
声を掛ける間もなく私は再度井戸の中に飛び込んでいた。
「んなっ??!!おい!何してんだっ!!」
「ちょ、水琴ちゃんーーー??!!」
ばしゃーんといい音がする。そのあとから慌てる2人の男の声と、ざわつくギャラリー。
来てしまったのならば、また帰ればいい。
その時の私は冷静なようでいて、まったく冷静でなかったのだった。