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【ONEPIECE】恵風は海を渡る【エース】

第15章 それぞれの想い





 「水琴」


 ちょうど報告を受けたマルコが甲板へ出てきた。エースの問いから逃げるようにマルコへ駆け寄る。

 「マルコさん、遅くなってしまってすいませんでした」

 深く頭を下げる。

 「なんで遅れたんだよい」
 「ちょっと、道に迷ってしまって…」

 それで、報告があるんです。と続ける私の声は奇跡的にも震えていなかった。

 なんだよい、と促すマルコに一世一代の嘘を吐く。

 「……帰る方法が、分かったんです」


 私の言葉に聞いていたクルーたちがざわつく。


 「…それは本当か?」
 「はい。この島の西に異世界に続く入り江があって、そこを研究している人がいるんです。
 その人が、もう少しこの島で過ごせば帰れるって」

 考えていた通りに言葉を並べる。
 探るようにこちらを見つめるマルコににっこりと笑い掛ける。

 「随分と長い間お世話になってしまったけど、ようやく帰れるんです、私」

 本当にありがとうございました、と頭を下げる。

 「事情は分かった。水琴、一つだけ聞く」
 「はい」
 「お前が言いたいことは、本当にそれだけか」


 動揺が走る。それがばれないように、笑顔を浮かべる。

 「それだけですよ?」
 「……そうか、わかった」
 
 親父に伝えて来いよい、と言われ船内へ向かう。
 
 「おい、ちょっと待てよマルコ!そんな簡単に…」
 「お前はちょっと落ち着けよい」

 後に続いてこようとするエースをマルコが引き止めてくれた。そのことにほっとする。

 これ以上エースと一緒にいれば、取り繕うことなど出来なかっただろうから。



「そうか……」



 船長室に一人で入り、マルコと同じことを話す。
 すると白ひげは小さくそれだけ呟いた。

 「今までお世話になりました」


 頭を下げる水琴の肩にそっと手を置く。


 「寂しくはなるが、お前が選んだことだ」

 達者でやれよ、と告げられる言葉に涙が溢れそうになる。

 決心が鈍らないうちに、と私は部屋に戻り荷物をまとめた。


 一度部屋をぐるりと見渡す。

 この部屋で過ごすことも、もうないのだ。



 孤独が急に水琴を襲う。



 「……行かなきゃ」


 振り切るように、水琴は甲板へ向かった。


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