第94章 抗うもの
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“その日”は突然やってきた。
いつものように昼の差し入れを持って三人の根城を訪れた水琴は人気のないそこに嫌な予感を覚える。
念のためいつも三人が百本勝負をしている広場へも行ってみたがそこにもいない。
訳も分からぬ焦燥感に駆り立てられ、水琴は風を飛ばした。意識だけがコルボ山を縦横無尽に駆けていく。
海の見える崖沿い、よく釣りをしている川辺、海賊貯金の隠し場所、獲物の狩場。
彼らがいそうなところを片っ端から確認していくがどこにもその痕跡は見つからない。
「お願い……」
早く出てきて、と心の中で祈れば目立つ麦わら帽子が見えた。
はっと目を開きルフィを見つけた場所に愕然とする。
瞼の裏に映った光景の中にはエースもまた共にいた。そしてブルージャムの姿も。
まさかまた面倒ごとに巻き込まれているのだろうか。
サボが見えなかったことも気になる。水琴はそっと風となり彼らが見えた場所、グレイターミナルにほど近い森の奥地へと飛んだ。
あまり近くに飛べば見つかり騒ぎになる。エースとルフィの状況がつかめない中、無理に突っ込むのは躊躇われた。
二人はブルージャムの一味に言われ何かを運んでいるようだった。見たところ乱暴に扱われているような感じではないが、ならばなぜ二人はサボと離れてブルージャムに協力しているのか。
まずは状況を確認しなければならない。一味と少し離れたところを見計らい、水琴はエースの傍へ忍び寄った。