第15章 それぞれの想い
メイン通りへ戻ってきたエースは遠くに見知った姿を見つけ駆け寄った。
「水琴!!」
とぼとぼと歩いていた姿は捜していたもので。
思わず声を掛ければ水琴は俯いていた顔を挙げた。
「……エースさん?」
「どこ行ってたんだよ。約束の時間になっても来ねェから心配したじゃねェか」
「あ、すいません…」
「…無事なら良いけどよ。ほら、戻ろうぜ」
どこか元気のない水琴の手を取る。
「……お前、指どうした?」
別れた時にはなかった絆創膏が目に入り、訊く。
ぴくり、と一瞬水琴の手が揺れた。
「ちょっと、怪我しちゃって。少し切っただけだから大丈夫ですよ」
心配させまいと笑う様子はどう見てもおかしい。
「…何があったんだよ」
「別に何も。ほら、早くしないとマルコさんに怒られちゃいますよ!」
早く早く、とエースの手を放しウラ街へ続く道へ駆けていく。
あ、おい!とエースもその後を追った。
「……?」
ふと、振り返る。
「………気のせいか」
何か、視線を感じた気がしたが。
エースの見る先には怪しい影は何もない。
エースさん早く!と遠くで水琴の声がする。
ウラ街で絡まれたら厄介だ。エースはすぐにその後を追いかけた。
***
「あ、水琴お帰りー」
「ハルタさん、遅くなってすいません!」
はい、これお土産。と私は甲板でぼんやりしていたハルタにこの島の名物だという焼き菓子の袋を渡す。
「あ、買ってきてくれたんだ、ありがと!」
「いえいえ。それで、マルコさんは……」
「あぁ、マルコなら中だよ。心配してたみたいだけど」
「すいません……」
話をするために中へ入ろうとする。後ろから水琴!と声が掛かった。
「なァ、やっぱりお前何かあったんじゃ…」
「エースさん……」
「おかしいぞ、お前」
じ、と真剣な表情でこちらを見つめてくる。
本気で心配してくれている様子に縋ってしまいたくなる。
助けて、と言いたくなる。
だけど駄目だ。
異世界から来たなんて怪しい私を、こんなに真剣に心配してくれる優しい彼らを、巻き込むことなんてできない。