第93章 絆の証
それは小さな箱だった。手のひらにすっぽりと収まってしまうその箱の中身に検討がつかず水琴は三人の顔を見返す。
「これって……?」
「開けてみろよ」
手渡され、水琴は箱を開ける。
中から現れたのは銀色に輝くバレッタだった。見覚えのある青と白の石に水琴は息を呑む。
それは必要な部品を買いに端町へ行った時、店先で偶然見かけたものと全く同じだった。
あまり無駄遣いはできないと眺めるだけに留めたのだが、まさか見られていたのだろうか。
「数日前偶然見つけたんだ。水琴好きそうだなって思って」
「マキノのとこで働いて金貯めたんだ!」
「マキノのお店で?じゃあ臨時の日雇いって……」
「俺たちのことだよ。水琴には日頃から世話になってるからさ」
手の中のバレッタに目を落とす。曇りない銀が光を反射し白く光る。
本物の銀で出来ているわけではない。石だって巷に溢れる模造品だろう。
だが三人が贈ってくれたというだけで、それは水琴にとって本物の宝飾品以上に価値をもつものとなった。
顔を上げる。ただ一人黙り込んでいたエースが視線を彷徨わせた後もごもごと呟いた。
「……気に入ったかよ」
僅かに染まる頬に知らず口角が上がる。
湧き上がる感情をそのままに水琴はもちろん、と破顔した。
「なな、水琴つけてみてくれよ」
ルフィに促され水琴は髪をハーフアップにまとめ直しバレッタで固定する。
よく見えるように背後を向き軽く振り返った。
「どう?似合うかな」
「似合う似合う!水琴そういう髪型も新鮮でいいな」
「オフの時は下すこともあるんだけど、邪魔だから一つにまとめちゃうんだよね」