第93章 絆の証
「あげたら喜びそうだな」
まるで心を読んだかのようなタイミングでかけられた背後からの声に心臓が飛び跳ねる。
勢いよく振り返ればサボがにっと人好きのする笑みを浮かべた。
「バレッタか。エースも意外と良いセンスしてるな」
「何も言ってねェだろ!」
「なんだ、プレゼントか?」
兄二人の会話を聞きつけルフィが間に割り込む。
食べ物以外は何かと人にやりたがるこの弟はエースとガラス越しのバレッタを見比べて満面の笑みを浮かべた。
「水琴にやるのか?いいなそれ!」
「やらねェよ!この前花やったばっかじゃねェか」
「あれは仲直りのプレゼントで、しかもルフィからだろ?」
思えば水琴にプレゼントってあんまりしたことないよな、と呟くサボの言葉に確かにとエースは内心同意する。
いつも何かと世話になっているが、エースたちから何かをしてやったことはあまりない。
記憶にあるのは水琴が風邪で倒れた時レモネードを作ったことくらいか。
あれだってあまり良い出来とは言えなかったが、完治した水琴はありがとうとそれは嬉しそうに笑っていた。
「改めて感謝の印ってことで渡すのはどうだ?」
「……でも、こんなもん買う金ねェだろ」
消極的なエースの同意にサボはそうだなぁとバレッタの横に書かれた数字を見る。
その額はバカ高いというわけでもないが、子どもがおいそれと使える額でもなかった。
海賊貯金を崩せば簡単に払えるだろう。だがあれは元々色々な奴らからかっぱらってきたものだ。それでプレゼントを買ってもきっと水琴は喜ばないだろう。
「狼二、三匹売れば足りねェかな」
「毛皮はこの時期需要があるもんな。でも二、三匹じゃ足元みられるだろ」
「ワニとかどうだ?」
「そりゃお前が食いたいだけだろ」
わいわいと相談していれば路地に人が入ってくる。
また男たちに追われては敵わないと三人は端町を離れることにした。