第14章 異世界の民
「…さて、これで君が異世界の民だという証明は出来た」
先程までの豹変が嘘のように落ち着きを取り戻していたベルクがへたり込んでいた水琴を振り返る。
「ここからは取引だ。ここで私の研究に付き合う気はないか?私は異世界の研究がしたい。君は帰る方法を見つけたい。お互いに利益があると思うが」
「…冗談でしょう。お断りします」
誰が、こんな危険な男に命を預けるというのか。
先程の様子から、例え帰る方法が分かったとしてもこの男が易々と帰してくれるかどうかなんて分からない。
死ぬまでモルモットとして利用されるのが落ちだろう。
「仲間の所に帰してください」
「…君も往生際が悪い」
白ひげ海賊団だったかな、仲間とやらは。
続けられた言葉に目を見開く。
「どうして知ってるんです?」
「オモテ街で君を捜す男がいると情報が入ってね。様子を窺ってみれば火拳じゃないか。なぜ海賊なんかと共にいるのか理解に苦しむ」
だが、私には好都合だ。
ベルクが懐から再び何かを取り出す。
金色に光る電電虫。
漫画でも見たことのある独特のフォルム。
「これは海軍本部の者から預かっている電電虫だ。
これを私が押すだけで、この島に海賊を駆逐しようと大型の軍艦十隻と本部中将五人が押し寄せる」
そろそろこの島に海賊がうろつくのもうんざりしていたところだ、と電電虫を弄ぶ。
「…白ひげは、そんな簡単にやられない」
「確かに、壊滅は難しいだろう。だが大きな痛手になることは間違いない。おまけに、今は近くに赤犬もいる」
ざわりと肌が粟立つ。
赤犬。
なるべくなら係わり合いになりたくない、海軍大将の一人。
漫画で、エースの命を奪った張本人。
彼とエースを鉢合わせては、絶対にならない。
「……さぁ、どうする?」