第93章 絆の証
「何も買わないな」
「買い出しが目的じゃねェのか?」
「でも夕飯の買い出ししないとって言ってたろ」
「エース、サボ!水琴行っちまうよ」
様子を探っているとふらりと水琴が路地へ入っていくのが見える。
あちらの方はあまり行ったことのない方だ。見失わないうちにと三人は駆け出していく。
「あっ、お前ら……!」
「げっ」
通りを駆けていると見たことのある男たちがエースたちを見て声を上げた。
以前裏路地でぶん殴ったチンピラたちだ。ここ数ヶ月でめきめきと実力をつけていた三人は端町ではそこそこ名を知られることとなっていた。
もちろん悪い意味で、だ。
「てめえら性懲りもなくオレらのシマ荒らしに来やがって!」
「今日という今日は許さねぇ!」
煩い足音を響かせ男たちが迫る。めんどくせぇな、とエースはサボへ目をやった。
向こうも同じ考えだったのだろう。うんと一つ頷くとルフィをひょいと抱え上げる。
そしてくるりと反転したかと思えば駆け出した。
「あっ!!」
「てめ、待ちやがれ!!」
普段ならば話は別だが今はあんなチンピラに構っている暇はない。
小柄な体躯を活かしてエースたちはさっさと通りを駆け抜けていった。
背後から悪態をつく声が響くが撤退を決めたエースたちにそう簡単に追いつくことはできない。
適当に走り回り撒いてから、エースたちは再び先程の路地まで戻ってきていた。
「水琴いるか?」
「もういそうにないな」
さすがに時間を食いすぎた。どこかの店に入ってしまったのか、それとももう抜けてしまったのか。
今回も失敗だな、とエースは息を吐いた。