第93章 絆の証
「これは、第二回水琴捜査線の開幕か?」
「なんだそれ?」
サボの冗談めいた言葉にルフィが反応する。そういえばあの時、ルフィはまだいなかった。
昔な、とサボが簡単に過去の一件を説明してやると途端に目を輝かせ始める。
「おもしれーじゃん!やろう!」
「やろうって簡単に言うけどな」
「結局あの時は撒かれて失敗したんだよなぁ」
サボの言葉にそういえば桜の件は話していなかったなとエースは思い出す。
あの山頂で薄紅に埋もれるように眠っていた水琴。
まぁもう今更だし言わなくてもいいかとエースは困り顔のサボと楽しそうなルフィを見ていいんじゃねェのと口を挟んだ。
「エース?」
「少し探偵の真似事でもすればルフィも満足するだろ」
「……まぁ、お前がいいならいいけどさ」
あの頃の決着を知らないサボはまた同じように藪蛇になることを心配していたのだが、当のエースはそんな相棒の配慮に気付くこともなく煮え切らない様子のサボに首を傾げていた。
兄二人の了承を得たルフィはじゃあ決まりだな!と嬉々として立ち上がる。
「それじゃあ水琴追っかけよう!」
「どこ行ったんだろうな」
「端町じゃねェの。買い出しもするって言ってたし」
おそらく水琴は風になり向かっただろう。現場を押さえるためには早く追いつかなければならない。
早速三人は森を抜け端町へと向かった。うっそうとした森は厳しく辛い環境だが庭として駆けまわっている三人にとっては苦でも何でもない。
途中ワニに食われそうになるルフィを助けるというひと騒動も起こしつつ、三人は端町へと辿り着いた。
「さて。あいつはどこに行ったんだ?」
「あ、むこう!」
ルフィの声に視線を向ければ通りを物色している様子が目に入る。
三人よりも早く着いたはずだが、意外にも水琴はまだ何も買ってはいないようで身軽な様子だった。
見ていた店でも少し言葉を交わすだけで何も買わずに離れていく。