第93章 絆の証
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「__水琴。水琴!水零れてるぞ」
「……はっ!!」
サボの言葉に水琴ははっと顔を上げる。それを向かいに座るエースは何やってんだと呆れながら見つめていた。
エースが人知れず決意を固めてからようやく元の距離感に収まった二人だったが、最近どうも水琴の様子がおかしい。
昼間からうつらうつらと船をこぐことが多く、今も昼食の途中だというのに意識は半分夢の世界に旅立っていたようだ。
力の抜けた手から落ちかけていたカップを慌てて持ち直す。大丈夫か?と心配するサボに平気平気、と水琴は笑って答えた。
「最近ちょっと寝不足で」
「水琴が寝不足なんて珍しいな。忙しいのか?」
「んー。ちょっとね」
曖昧に濁す様子に何か隠しているなとピンとくる。
また仲間のことで思い悩んでいるのだろうか。それにしてはあまり思いつめた様子は感じられない。
一体何なんだと訝しんでいるうちに水琴はさっさと片づけを済ませ席を立っていた。
「私今日は出掛けるから。三人とも手合わせ頑張ってね」
「おう!またな!」
去っていく水琴をルフィが元気良く見送る。
水琴の姿が完全に見えなくなるのを待つと、サボはエースへ向き直った。
「水琴、なんか隠してるな」
「サボもそう思うか」
「だって分かりやすいし」
なんだろうな、とサボは首を捻る。
「エース。お前ちゃんと“仲直り”したんだよな」
「したよ!あの後お前らとも会っただろうが!」
エースと共に小屋へ戻った水琴はルフィから花をもらいいたく感激していた。
あの花は水琴の手により押し花にされ彼女の自室に飾ってある。
それをもってあの件は一件落着となったはずだった。
それが数日もしないうちに不審な行動をとる水琴の様子に一体何事かとエースとサボは顔を見合わせる。