第93章 絆の証
「慣れれば簡単よ。実は最近裁縫に凝ってて」
端切れを縫い合わせて小物を作るのも楽しいのよね、と笑うマキノの視線の先にはカラフルな色合いのティーコゼーがある。
気付いてみれば店内のあちこちに似た色合いの小物が飾られていた。
「あれも全部マキノが作ったの?」
「やってみると意外と楽しいわよ。水琴もどう?」
「うぅーん、私の腕じゃなぁ……」
正直彼らの活発さに耐えられるだけの服を縫える自信はない。
だけど思えば料理はよく差し入れていたが、形に残るものはあげたことがなかったように思う。
せっかく兄弟として仲良くまとまったのだ。随分と時間は経ってしまったが何か記念にあげたい欲求が水琴の中に生まれる。
「……あ」
目に留まったのは布地に埋もれる色とりどりの糸。
閃いた考えに水琴はそうだ、と声を上げる。
「マキノ、ちょっと教えてもらいたいことがあるんだけどいい?」
「どうしたの急に改まって」
「ちょっとね」
裁縫は得意ではないが。
これならば自信がある、と水琴はたくさんの糸を手ににっこりと笑った。