第93章 絆の証
黙り込む水琴を年頃のマキノが逃すわけもなく。マキノはだれだれ?と机に身を乗り出し楽しそうに瞳を輝かせた。
「常連さんの誰か?それとも端町の方かしら。まさかとは思うけど__」
「あー!あーあー!聞こえませーーん!!」
核心に触れそうなマキノの問いから耳を塞ぎ逃れる。嘘が下手なのは十分承知している。隠そうとしてもすぐにばれてしまうだろう。
ならば最初から耳に入れなければいいのだ。文字通り聞く耳を持たなくなってしまった水琴にマキノは頬を膨らませた。
「__あ、マキノそういえばこれってルフィたちの?」
別の机の上に積まれた衣類が目に入り、ちょうどいいとばかりに水琴は話題を変える。
あからさまな逸らし方にマキノは一瞬ジト目で水琴を睨むものの、今は無駄だと悟ったのかえぇそうよと水琴の話に乗った。
「ルフィがお世話になってるから、他の二人にも服を用意してみたの。服ならいくらあっても困ることはないでしょう?」
確かに彼らはしょっちゅう汚したり破いたりしてくるのでありすぎて困るということはない。
助かるよ、と言いながら服を見ていると中に布が交じっているのに気付いた。
よく見ると縫い途中の服もある。もしかしてと水琴はマキノへ目を向けた。
「これ全部マキノが作ってるの?」
「そうよ。要らない服とか布をもらってきて作り直したの」
「すごいね!売り物みたい」
丁寧な縫い目に感嘆の声を上げる。
細かい隙間で等間隔に並ぶそれはまるで機械で縫われたようで、家庭科の成績が芳しくなかった水琴には到底まねできない代物だった。