第92章 宣戦布告
日が昇るのを待ちダダン一家の小屋を尋ねれば三人の様相に一行は呆れかえった後風呂を用意してくれた。
「水琴は?」
身構えていたエースは小屋に水琴の姿がないことを知り拍子抜けする。
エースの問いに水琴なら朝早く出てったニーとドグラが答えた。
「最近日が昇る前にふらっと出歩いてるみたいだ。もう少ししたら帰ってくると思うから」
マグラの補足にエースはほっとしたような、残念なような妙な気持ちを覚える。
早く水琴に謝り気持ちを伝えてしまいたい思いとそんな時など永遠に来なければいいと思う気持ちがせめぎ合い腹が痛い。
だがそうもいっていられない。さっさと風呂から出たエースは水琴を探しに小屋を飛び出していった。
どこに行ったのだろう。冬の朝はあまり得意とは言えない水琴が何故、こんな早朝から外をうろついているのか。
またあの桜の木だろうかと思ったものの即座に否定した。今は冬の初めだ。さすがにあそこにはいないだろう。
ならどこだろうとエースは想いを巡らす。フーシャ村のマキノの店?グレイターミナル?エースたちの根城近くの広場?
考えている間に視界が開け耳を波の音が撫でた。
気付けばあの海の見える崖まで来ていたらしい。太陽の光に照らされた空と海が支配する世界がそこには広がっていた。
そしてその世界を一望する場所に小さな背中が座り込んでいるのを見つけ、エースは足を止めた。
水琴はエースに気付かないままじっと水平線を見つめている。
ようやく見つけた目的の人物を前に、エースは脈打つ心臓を宥めるために大きく息を吸い、吐いた。