第92章 宣戦布告
「ルフィ!お前こんな時間にこんなところで何やってんだ!」
「心配したんだぞ。どうして一人で出ていったりしたんだ?」
「エース、サボ……」
見つかってしまった後ろめたさからルフィは気まずそうに目を逸らす。
「べ、別にちょっと散歩してただけだし……」
「嘘つけ。目が泳いでるぞ」
「ルフィ。怒らないから、本当のこと言ってみな」
「……あれ」
観念してルフィがどこかを指し示す。エースとサボはルフィの指さす方へ明かりを向けた。
だがそこには頭上に切り立つ絶壁があるだけでおかしなところは何もない。
一体何のことだと首を捻る二人にルフィは「それじゃダメだ!」と注意した。
「明かりつけてたら見えねェから、消してくれよ」
「なんでだよ。消したら見えねェだろ」
「いいから!」
言われて渋々明かりを消す。
すると闇の中に先程までは見えなかった白い明かりがぼんやりと浮かび上がってきた。
「あれなんだ……?」
「すっげーだろ?夜しか咲かない光る花なんだって!」
興奮してルフィが叫ぶのをエースは聞き流しながら崖の上に咲く小さな花を見上げる。
確かに闇夜で光る花は珍しいと思う。だがわざわざ怖がりのルフィが一人森の中に入ってまで探し求めるものとは到底思えなかった。
サボも同様に思ったのだろう。戸惑い気味にルフィを見る。
「ルフィはこの花を探してたのか?」
「おう!水琴が見てみたいって言ってたから」
明るく告げられるその名にぎしりとエースの心が軋む。
同時にそうやって前面に好意をさらけ出せるルフィを羨ましく感じた。
よし!とルフィは再び立ち上がり目の前の壁に手を掛ける。
土塗れなのは登ろうと試みて滑り落ちたからだろうか。爪の間に食い込む土はルフィが何度も挑戦していることを教えてくれた。