第92章 宣戦布告
冷静なサボの言葉にかっと頭に血が上る。
どれだけ悩んで、どれだけの決意でエースが今この場に立っているか、本当にサボは分かっているというのか。
「大事なものってなんだよ!おれは何も見失ってなんかない!」
「じゃあ昼間の水琴を見てなんにも思わねぇのかよ!」
エースにつられるようにサボもまた声を張り上げる。眠りを妨げられた鳥がどこかでぎゃあぎゃあと喚き声を上げた。
あまり見ない鋭い視線がエースを責めるように射抜く。いつも一歩引いてエースとルフィの間に入ることが多いサボが激情を吐き出している姿をエースは初めて見た。
「尻尾取りのことか?疲れて参加できないのは悪かったよ。でもそれは水琴だって仕方ないって__」
「疲れたって?お前が?ルフィとたった三戦しただけで?本気でその言い分を水琴が信じたと思ったのかよ」
「………」
「そうじゃない。そこじゃないんだ。お前は水琴が“あんな風に笑うのを見て”本当に何も感じなかったのか……?」
サボの痛々しい問い掛けに昼間の水琴の笑みを思い出す。
子どものわがままを許す、大人の綺麗な笑み。
__水琴の気持ちが一切見えない、綺麗な。