第92章 宣戦布告
「ルフィー!」
「おーい!どこにいんだ?」
静かな森の中にエースとサボの声が響き消えていく。
そんなに遠くへは行っていないはず。すぐに見つかるだろうと高をくくっていたエースはまるで応える気配のない闇夜にだんだんと不安を覚え始めていた。
浮かぶ汗が冷やされ服が肌にじっとりと張り付く。その気持ち悪さに眉を寄せ、小さく舌打ちをした。
「ルフィの野郎、いったいどこにいんだ」
「これ以上奥まで行くと狼の生息地だぞ。まさかそこまで行ってないよな」
なんせルフィの意図がさっぱりと見えない。何か目的があってどこかへ向かっているのか、それともただ単に迷っているのか。
どうするかと思案していたエースに「あ、そうだ」とサボは何かに気付き顔を上げた。
「水琴のところ行ってみようぜ。もしかしたらそっちにいるのかもしれないし、いなくても水琴なら風で捜せるだろ」
「__おれはもう少し捜す。サボだけ行ってきてくれ」
なるべく二手に分かれた方が効率的だと聞こえるように言ったつもりだが、サボはそのように受け取らなかったようだ。
眉をひそめ、明かりで周囲を照らしていた腕をそっと下ろした。
「お前さ。いつまで水琴を避けるつもりなんだよ」
「……別に、避けては」
「いるだろ。ルフィまで怪しんでるくらい露骨に」
そこまで露骨なつもりはなかった。会話は普通にしているし、三人でなら水琴と絡んだりもしてる。
ただ、今までのように自分から必要以上に水琴に近づかなくなっただけだ。
「お前は極端なんだよ。何をうだうだと悩んでるのか、大体の察しはつくけどな。それで本当に大事なものを見失ってちゃ意味ないだろ」
「__なに分かった風に言ってんだよ」