第14章 異世界の民
「…なんで、それを……」
「私はDr.ベルク。ずっと求めていたんだよ。君たちのような存在を」
すっと本棚に寄る。暗くて分からなかったが、そこにはたくさんの異世界に関する資料が並んでいた。
「この島の入り江。面白いだろう。グランドラインにはあのような“不思議な空間の捻じれ”が数多く存在する。そしてそこから、様々なものが流れ着く。
…見たこともない知識の詰まった本、高度な技術で作られた機械、
……そして、時には人さえも」
見つめられるその目の奥にちらつく狂気にぞくりとする。
「…私があそこにいたからって、異世界の民だとは限りませんよ」
精いっぱいの抵抗としてシラを切る。
「君は異世界の民だ。あの未知の文字を読んでいただろう」
「ただ、どこかで見たことがあっただけです。グランドラインには、あんな場所がたくさんあるんでしょう?」
そう言えばふむ、と考え込む。
これはもしかしたら、押し切れば解放してくれるかもしれない。
「私はただ観光でこの島に寄っただけです。仲間が待っているので解放してください」
「それは出来ない。君が異世界の民である可能性がゼロでない今、こんなチャンスを逃すことは出来ない」
「でも、私が異世界の民だっていう証拠なんてないですよね」
証拠なんてあるわけがない。
井戸から出たところを直接目撃している白ひげクルーたちを除き、水琴が異世界の民だと証明できる者なんていない。
「…証拠。証拠ならあるさ」
にやりとベルクが口を歪める。
「異世界の民の血は万能薬になると言われている。私も、文献で見ただけだが…」
試してみる価値はあるだろう、と言われ顔を蒼くする。
「万能、薬…?」
そんなまさか、と呟く。
「信じられないと思うか?だが、試せば分かることだ」
乱暴に腕をひかれ置かれていたハイスタンドテーブルの所へ連れて行かれる。
懐から小さな小瓶を取り出すと、ベルクは一滴水槽の中に落とした。
しばらくすると、穏やかに泳いでいた魚の様子が一変し、狂ったように痙攣し始める。
「今入れたのは猛毒だ。一分もしないうちにこの魚は死ぬだろう」
「そんな…!」
「さぁ」
ぐいっと強引に手を差し出される。ギラリと光るメスに腕を引こうとしたがびくりともしない。