第91章 自覚
「おれも行きたいっ!」
「ルフィは明日一緒にマキノのところに行こう」
「今日は俺と稽古しようぜ」
「絶対だぞ!約束だからな」
ついて来たがるルフィを何とか宥め、水琴と二人山を下りる。
そういえばこうやって山を下りることが増えたのも水琴と会ってからだ。
水琴と出会ってエースの世界は随分と広がった。
けれど、水琴が知る世界はまだずっとずっと広いのだろう。
「ねぇ。本当に大丈夫?」
急に振り向いた水琴と目が合いエースの心臓は飛び上がった。
「来てくれた方が助かるけど、無理だったら私一人でもいいんだからね」
「しつけェな。平気だっつってんだろ」
「どうかな~。エース痩せ我慢しそうだからなー」
「いいから前見ろ!転んでも知らねェぞ」
「はいはい」
ようやく外れた視線にエースは息をつく。
寝不足のせいだろうか。なんだか今日は調子がおかしい。
本当なら根城で一眠りしたいところではあるが、その間に水琴がフーシャ村で過ごしていると思うと安眠出来る気がしなかった。
そう言えばサボはまたからかい混じりに笑うのだろうが、これはあくまで変な男に引っ掛からないかと心配しているだけであって、他意はひと欠けらも無い。
今朝何か考えていたような気もするが、早朝からルフィのタックルをくらったら忘れてしまった。
忘れたということは大したことでは無いのだろう。きっと、たぶん。
しばらく歩けばフーシャ村が見えてくる。
ルフィの故郷らしく、端町とは違いお人好しの多い村だなというのがエースの第一印象だった。
一応この村も端町同様ゴア王国に属しているはずなのだが、あまりに離れているためかその影響はあまり無いらしい。
それはいい事だとエースは思う。あんな国の影響など無い方がいいに決まっている。