第91章 自覚
「エースどうしたの?」
「夢見が悪かったんだってさ」
「夢か!おれなー、怪獣をやっつける夢見たんだ!」
その日の昼。ぐったりとテーブル代わりの切り株に身を預けるエースに三人は三者三様の視線を向ける。
サボの言葉にエースもそんなことがあるんだねぇと呑気に昼食を摘む水琴の様子を見るに、どうやら昨夜忍び込んだことはすっかり忘れられているらしい。
そんな調子で大丈夫かと思わないこともないが、今回ばかりは助かった。
もしも昨夜のことについて触れられたら死のうかと思った。
「エースかサボにフーシャ村までついて来てもらおうと思ったんだけど、その調子だとサボの方がいいかな」
エースが内心胸を撫で下ろしていると聞き捨てならない言葉が飛び込んできて思わずエースは顔を上げる。
「フーシャ村までって、何しに行くんだ?マキノの店の手伝いは明日だろ?」
「山で採れた薬草とか卸しに行こうと思って。山は危険だからなかなか採れないんだって」
サボの問いにこの前持っていったら喜んでたからと水琴は補足する。
確かに山には貴重な薬草も多くある。安全に入手出来るならそれは喜ぶだろう。
しかし手伝いが必要なほど大量に持っていく気なのだろうか。
「私が持っていくのはそんなに無いんだけど……ほら、いつもお礼って色々くれるから」
この前カゴいっぱいに作物を持って帰ってきた水琴を思い出す。
なんだかんだ村人に気に入られている水琴はことある事に色々貰ってくるのだった。
「必要ないかもしれないけど、念の為ってことで。どうかな?サボ」
「俺は別に構わないけど……」
「おれが行く」
二人の会話に割って入りお供に立候補する。
エースの言葉に水琴は心配そうにその目を向けた。
「エースが?でもしんどいんでしょう。休んでていいよ」
「ルフィと留守番の時点でゆっくり休めると思うか?」
手伝いの方が遥かに楽だろう。
それは水琴も自覚があったのか、特にそれ以上何かを言ってくることは無かった。