第90章 船長勝負
「エース」
「あ?」
「ちょっと、ぎゅってしていい?」
「は?!」
「私頑張ったし。ね?ちょっとだけ」
「いや、ちょっとって、お前……!」
両手を広げ待つ水琴の前で顔を赤くして狼狽えるエースの背後からルフィがあぁ~!という叫び声を上げる。
「おれも!おれも水琴ー!」
「うん。ルフィもおいで」
「あ、じゃあ俺もー!」
水琴の腕の中に真っ先にルフィが飛び込む。その後ろからサボも楽しそうに駆け寄った。
「ほら、エースも」
「……~~~っ」
先に収まった兄弟たちに呆然とするも、再度名を呼ばれエースはそろそろと近寄る。
そんなエースの手をルフィとサボが引き、三人はすっぽりと水琴の胸へと収まった。
そこを水琴がぎゅっと抱きしめる。
「三人とも、助けてくれてありがとう」
温かい。
子ども特有の、早い鼓動が伝わってくる。
その命の音に、水琴は目を閉じた。
細かく震える水琴の腕に、三人はただ黙って抱きしめ返した。
***
「結局船長はエースかぁ」
ある日の三人の根城にて。
いつものように水琴の持ってきた昼を囲んでいるとサボがそうぼやく。
「悔しいけど、やっぱエースは強いよな。破壊者すら倒しちまうんだもん」
「__あれは、おれだけの成果じゃねェだろ」
元々あの作戦はサボが主に対して使用していた投石器を見て思いついたものだった。
ルフィの能力と、サボの知恵。
そしてエースの力、全てが合わさってようやく倒すことができたのだ。
「だから、あれはノーカンだろ」
「じゃあ、やっぱり船長はおれー!」
「それは違うだろ!」
「そんならまたリベンジだな!」
「いいけど、次はもうちょっと穏やかな方法にしようね」
まだ傷の治りきっていない水琴は三人の様子に苦笑を浮かべる。
そんな水琴を見てエースは気まずそうに顔を逸らした。