第90章 船長勝負
「__なァ」
食事も終わり駆け出していく兄弟から離れ、エースは片づけを行う水琴へと近寄る。
「どうしたの?」
「………もっと、強くなるから」
ぽつりと呟かれた声は悔しさの色が滲み。
思いつめたような表情は、縋るように水琴を見上げていた。
「ちゃんと、守れるように。お前に守ってもらわなくても、平気なように」
だから、と口を開き閉じる。
「__うん。待ってるよ」
俯いてしまったエースの脇にしゃがみ、視線を合わせる。
「だから、大人になったら私を海に連れて行ってね」
「っあァ」
ぱっと顔を上げたエースは力強く頷く。
その瞳にはいつものエースの、希望に満ちた光が灯っていた。
「待ってろよ!あっという間に強くなってやるから!」
「うん。楽しみにしてる」
兄弟たちの方へ駆けだしていくエースの背に手を振る。
手をそっと下ろしてからも、水琴はもう見えない小さな背を見送り続ける。
「__心配しなくても、ずっと守ってもらってるよ」
どれだけ海を隔てていたとしても。
どれだけの時を越えていたとしても。
水琴の心の中の太陽は、いつだって光り輝いている。