第90章 船長勝負
「ちくしょう!いけると思ったのに!」
「いい線いってたのになぁ。やっぱトドメが弱いか」
「おれもあとちょっとだったのになァ!」
「「それはない」」
安全地帯まで逃げた三人と水琴はそれぞれ自身の敗因を振り返る。
悔しがるエースと次の作戦をぶつぶつと考えるサボ、技の見直しをしているルフィをそれぞれ見つめ、水琴はねぇ、と声を上げた。
「やっぱりさ、別の対決にしない?」
正直勝ち筋が全く見えない。
大きな怪我をしそうな場合は助太刀するつもりではあるが、三人がどのようにアタックしていくのか分からないためさっきから水琴の心臓は飛び上がりっぱなしだ。
せめてもう少し身の安全を保障できる内容に変えてもらいたい。主に私の為に。
「今更変えられるか!こうなったら絶対に倒してやる!」
「まだ試したいこともあるしな」
「おれも、他の技試してェ!」
あれだけコテンパンにやられたというのに三人の心は全く折れていないらしい。早速二回戦を始めようとする三人に水琴は溜息を吐いた。
「いいけど、天気が崩れそうだからあと少しだけだよ」
どんよりと薄暗い雲が僅かにかかり始める。
雨が降ってしまえば三人のフォローをするのは難しい。
そう言えば三人は大人しく応じた。
***
二回戦、三回戦と挑み容赦なく返り討ちにあう三人もそろそろ疲労の色が見え始めていた。
もうやめようと言う水琴に対し意地になり始めたのか、三人はあともう一回!と食い下がる。
「もう次で最後だからね」
そろそろ帰らなければ夕飯の支度に間に合わない。
最後の一試合ということで、もう一度水琴は三人を連れ主の元へと向かった。
「よーし!次こそ倒すぞ!」
まったく衰えない勢いでルフィが主の方へと向かう。
残りの二人も自分の番に備え四方へと散っていった。
一人になった茂みの中で水琴はいつでも飛び出せるようルフィの様子を注意深く見守る。
「……ん?」
ふと別の気配を感じ水琴は周囲へと目をやった。
主とは違う、別の敵意を持った何かがいる。
どこだ、と水琴は視線を走らせる。その視界の端に黒い影が映った。