第89章 もうひとつの家族
「あんな大人数の山賊相手に、全然怯まず……無事だったのは、あんたのおかげだ」
「水琴ちゃんもルフィと同じ“へんてこ人間”だったんだなぁ」
「へんてこって」
「山賊さんたちもすごいな!ちっこいのも戦ってたんだろ?」
「やるなぁ」
男性の感謝の言葉を皮切りに、遠目で様子を見ていた村人たちがダダン一家を取り巻く。
距離を感じさせない対応にダダン一家もまた目を白黒とさせていた。
「明日からも、よろしく頼むよ」
「華が減るのは寂しいもんなぁ」
「みなさん……」
変わらない態度に目の奥がじんと痺れる。
山賊も海賊も、後ろ指さされて仕方のない存在だ。
それでも、この村の人達はこんなにも温かく水琴を受け入れてくれる。
「フーシャ村の人達は優しいね」
「あら。違うわ」
隣のマキノにそう言えば笑顔で否定された。
「優しいからじゃなくて、水琴がそうさせたのよ」
いつだって笑顔で村人に接し。
その丁寧な声掛けと心配りに好感を覚え、マキノの店を訪れる客も多かった。
村人の為に危険すら顧みず真っ先に飛び出していく、そんな水琴が相手だから。
「今更山賊だからって、何も変わらないわ」
「マキノ……」
「そうさ!水琴ちゃんさえよかったらやっぱりこの村に住まないか?」
「これからもマキノちゃんの店手伝うなら、その方が楽だろう」
「ありがとうございます。でも……」
ちらりと背後を見る。
そこにいるのはこの時代の、不器用で優しい、水琴の家族。
「__今の生活が、気に入ってますから」
にっこりと笑い、水琴は断った。