第89章 もうひとつの家族
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「水琴ー!早く早く!」
「待ってよルフィ」
洗濯物を取り込み終えた水琴の腕を引っ張りルフィが楽しそうに駆けていく。
一体何事かと転びそうになりながらも水琴がたどり着いた先は、来てはいけないと言われていた三人の根城だった。
「完成したの?」
かつて見た時は基部しかなかったその秘密基地は屋根も壁もついており、あの時うっかりルフィが漏らしたご立派な窓もある。
水琴の問い掛けにルフィはそうなんだ!と嬉しそうに頷き根城に向かっておぉーい!と声を上げた。
途端に窓から二人の顔が覗く。
「おせぇぞルフィ!呼んでくるのに何分かかってんだ」
「早く上がって来いよ、水琴も!」
「私もいいの?」
いいから、と背中を押され水琴は縄梯子へと足を掛ける。
はたして水琴の体重を支えられるだろうかと心配だったが、その造りは頑丈でまったく不安を感じさせることなく上へと上がることができた。
「うわぁ、凄いね……!」
高い天井に、歪みのない床。
子ども三人で作ったとは思えない完成度だ。
壁沿いには備え付けのチェストまである。それぞれの私物をしまうのだろう。名前を掘ったプレートまで準備されている徹底ぶりだった。