第89章 もうひとつの家族
「間に合って良かったわ」
「マキノが呼んできてくれたんだね」
「だって水琴一人で行っちゃうんだもの。心配で」
「おれもやっつけられたんだからな!」
あれと視線を下に向ければマキノに羽交い絞めにされたルフィがむっつりと睨み上げている。
ルフィの声がしないことは気付いていたが、なるほど。危険なのでマキノに捕まっていたらしい。
「おれだって、山賊くらいもうやっつけられたんだからな!」
「うんうん。そうだね、ありがとうルフィ」
「お前にはまだ無理だろ」
背後から聞こえた声に振り向けばエースとサボが立っていた。
エースの言葉にルフィは出来る!!と噛みつく。
「“ゴムゴムの銃”だってだいぶまっすぐ飛ぶようになったんだぞ!」
「あんなへなちょこ銃でどうやって倒すんだよ」
「出来るったら出来る!」
「まぁまぁ二人とも。今はもう止めようぜ。さすがに腹減ったよ」
サボが間に入り二人の睨み合いはようやく止まる。
しかし本当に総出で駆け付けてくれたらしい。辺りを見渡し水琴は何やらむず痒い気持ちでいっぱいとなった。
「あの……」
わいわいと賑わうダダン一家を眺めていた水琴に背後からそっと声が掛かり振り向く。
そこには人質となっていた男性が立っていた。
その背後には騒ぎを聞きつけやってきたであろう村人の姿がある。
「__巻き込んでしまって、すみません」
丁寧に頭を下げる。
ここまで大事になれば隠し通すのは無理だろう。
「明日からはもう、マキノの店には行きません。決して村にご迷惑はかからないようにしますので__」
「かっこよかったよ!ありがとう!」
「……え?」
頭を下げる水琴の手を男性が取る。
戸惑い顔を上げればそこに浮かんでいるのは拒絶の感情ではなかった。