第14章 異世界の民
よく見れば、他にも英字新聞のような物や旧式の携帯電話などがあちこちに落ちていた。
「これ、どこから流れ着いてくるんだろう…」
そこに元の世界へ帰る手掛かりがあるかもしれない、と痕跡を辿るため必死に足元を凝視する。
そんな水琴の背後に影が出来た。
「……っ?!」
不意に後ろから羽交い絞めにされ、口元に布を当てられる。
咄嗟に叫ぼうと息を吸った水琴は、思い切り布にしみ込まれた薬品を吸いこんでしまった。
………やば……
薄れる意識の中、手から本が滑り落ちるのを感じた。
***
オモテ街へと続く裏道の片隅。
そわそわとエースがオモテ街の方を見つめていた。
見上げる時計の時刻は約束の時間を少し過ぎている。
しかし一向に現れる様子のない水琴の姿に何かあったのではと心配になる。
「…やっぱ捜しに行くべきか?
いや、でも入れ違いになっても困るよな…」
うろうろと同じ場所を行ったり来たりすること数分。
「……だァァやめた!」
考えることは性に合わない。エースは一度オモテ街の方を覗きどこにも水琴の姿がないのを見届けてから、ダッシュでモビー号へと戻る。
「お、どうしたエース。水琴ちゃんは?」
水琴を迎えに行ったはずのエースが一人で戻ってきたのを見たサッチが声を掛けるが、それに返事をすることもなく船室へと入る。
「なんだありゃ」
「喧嘩でもしたのか」
顔を見合すクルーたち。
しかし次の瞬間再び甲板へ現れたエースの珍しい私服姿を見てぎょっと目を丸くした。
「ちょ、ちょっと待てエース!お前、なんだその格好」
「水琴が来ねェから見に行く」
「来ねぇって、約束の時間からそう経ってないだろ?今頃来てんじゃねェの?」
「道に迷ってるかもしれねェだろ。この島広いし」
「あ、おいっ!」
行ってくる!と止める暇もなくモビーを飛び出していく。