第14章 異世界の民
「またお前そんなの拾ったのかよ」
「いいだろ。おもしれぇじゃん」
突っ伏した水琴の耳に若い男性の声が届いた。少し首を傾けそっちに目をやれば学生風の二人組が何やら喋っている。
図書館では静粛にですよーと内心呟き再び目を閉じる。
「そんな読めない物眺めて何が面白いんだよ」
ぴく。
「そこがロマンだろ!失われた文明か…図もなんだか見たことない風景だし!」
ぴくぴく。
「…ねぇ君たち!」
がばり!と起き上がり二人組へ詰めよる。驚く二人を余所に手元の本をじっと眺める。
……やっぱり。
「…これ、どこで手に入れたの?!」
__西側の入り江だよ。たまに妙な物が流れ着くんだ。
__海から流れ着いたはずなのに本とかそんな濡れてないんだぜ。変だよな。
「西の、入り江…」
ここかな。
目的の場所にたどり着いた水琴は荒れた息を整える。
ドキドキと心臓が脈打つのはここまで全力疾走しただけが原因ではない。
…ようやく。
ようやく、手掛かりが掴めるかもしれないのだ。
震えそうになる足を一歩踏み出し、入り江を歩き始める。
そこにはぽつぽつと様々な物が落ちていた。
空き瓶や袋、流れ着いた枝…
「?これ……」
水琴が拾い上げたのはぼろぼろの本。
ぱらりとめくれば、掠れてしまってはいるが見慣れた文字が並んでいた。
「……日本語だ」
懐かしいその字体にじんわりと涙が浮かぶ。
小さな本をぎゅっと抱きしめる。
まるで異国で旧友に再会したような嬉しさが静かに心に満ちてくるのを感じた。
しばらくそのままじっとした後、水琴は探索を再開する。