第89章 もうひとつの家族
「あの時は暴れられなかったからな、ちょうどいいリベンジだ」
「あの時って、何やったんだエース」
「お前らガキ相手に何してる!撃て!!」
「駄目です頭!あいつら味方の間ちょろちょろ動いて…っ」
「撃ったら味方に当たっちまいます!」
「くそガキども……っ」
「大人数が裏目に出たね。この混戦具合ならおいそれと飛び道具は使えないだろ」
水琴!!と呼ぶダダンの声に口角を上げ水琴は腕を振るう。
風の壁は掻き消え、山賊とやり合う頼りになる仲間たちが視界いっぱいに広がった。
あぁ。
仲間がいるというだけで、こんなにも力が湧いてくるものなのか。
今なら何でもできそうな気がする万能感と共に、水琴は大量の風の矢を生み出した。
見聞色で仲間の位置は正確に補足している。
当てることはまずない。
「矢風!!」
水琴の言葉と共に飛び出した風の矢は寸分の狂いなく敵の手を、肩を穿つ。
その隙をつきダダン一家の面々が武器を叩き落し次々と捕縛していった。
***
お縄となった山賊は村人の手で保安官に突き出されることが決まった。
誰も怪我無く終息した騒動に水琴が安堵の息を吐いているとその頭を誰かが小突く。
「いたっ」
「あんたは!何を余計なことに首突っ込んでんだ!」
「ダダンさん……」
さすりながら振り向けば我らが頭が両腕を組み睨みつけている。
その背後ではドグラとマグラがダダンを必死に宥めていた。
「お前がいなくなったら誰がうちの家事を取り仕切ると思ってんだい!」
「まぁまぁ頭。こうして水琴も無事だったんだからよかったじゃないか」
「そうだニー。マキノが助けてくれって飛び込んできた時は血相変えて自分が一番に飛び出していったくせに、素直じゃな__」
「余計なこと言うんじゃないよお前らぁぁ!!」
怒鳴るダダンの顔は僅かに赤い。
彼女の照れ隠しは見なかったことにし、ごめんね、と水琴は素直に謝った。