第14章 異世界の民
「結構大きいなぁ…」
カフェで一服しながら水琴はもらった観光ガイドを開く。
そこには街全体の簡易マップが添付されていて、とてもじゃないが三時間で見て回れるような規模ではないことが窺えた。
「あら、観光?」
水のお代わりを注いでくれたウェイトレスが水琴に声を掛けた。
「はい。パンフレットに載ってない伝説とか、言い伝えみたいなのってどこに行ったら分かりますか?」
「あら。そういうのに興味があるの?うーんそうねぇ。だったら図書館に行くと良いわよ」
「図書館?」
「えぇ。少し中心街から外れた所だけど、蔵書量はこの島一よ。住人じゃないから貸し出しは出来ないけど、館内で閲覧は出来るから」
「そうなんですね…ありがとうございました!」
アイスコーヒーを一気に飲み干す。
次の行先は決まった。
楽しい一日を、と見送られ水琴はパンフレットに示された図書館へ向かう。
そこは想像よりもずっと大きく立派な建物だった。
下手すればそこらの市立図書館よりも立派かもしれない。
資料はたくさんありそうだが、ここから必要な情報を得ようと思うと三時間で足りるか微妙だった。
「考えていてもしょうがない…」
動かなければ結局時間だけが無駄に過ぎるだけだ。気合を入れ、民話・伝説と書かれたコーナーへ入り気になるタイトルを片っ端から抜き出す。
一時間後。
「……きつい……」
肩が重い。目が痛い。
めくってもめくってもかすりもしない。「異世界」という単語に期待を膨らませてみても、よく読んでみれば抽象的な概念だったり明らかに眉唾物な内容だったり…
読み慣れてきたとはいえ、母国の字ではないというのも疲労を増大させる要因となっていた。
「あーー無理かも…」
時計を見れば約束の時間まであと一時間くらいしかない。目の前に積まれた書物を見て水琴は大きな溜息をついた。