第85章 雨降って地固まる
「お前は、おれに一緒にいてほしいのか」
「……あぁ」
「いなくなったら、困るのか」
「…っ困る!」
「___おれに、生きていてほしいのか」
「当たり前だ!!」
その時のエースの表情を、サボはきっと忘れないだろう。
まるでルフィではなく、エースこそここに居ていいと許されたような。
今にも泣いてしまいそうなその表情に、サボは彼の背負うものの大きさを改めて感じた。
__海賊王の息子。
知り合って少し経った頃教えてくれたエースの秘密。
それは海賊を目指すサボにとっては憧れの存在だったが、息子であるエースにとっては憎悪の対象であった。
サボと出会う前のエースが海賊王とどんな確執があったのかはよく知らない。
聞いたら教えてくれるかもしれないが、どうしても聞けなかった。
ふとした時に見せるエースの全てを拒絶するような表情は声を掛けるのをためらわせたし、自分自身にも秘密があると思うとどうしても一歩が踏み出せなかった。
でも。
「ほら!これで仲直りだ!なぁエース、ルフィ!」
「……別におれは喧嘩していたつもりは」
「細かいことはいいんだって!」
でも、ルフィがいれば、もしかして。
「ほら、そろそろ一度戻らないと水琴心配してるんじゃないか?」
「なぁサボも今日は一緒に飯食おう!」
「お、そうだなぁ今日は何も調達してねぇしなぁ…」
「別に一人増えたって気にしねェだろ」
俺達三人は、もっと近づけるのかもしれない。
両手に伝わる異なる温もりに、サボは小さな希望を感じた。