第85章 雨降って地固まる
「…はっ、はぁ……っ」
自分以外立つ人間のいない半壊した小屋の中でエースは息を整える。
もう起き上がってこないことを確認し、エースはくるりと周囲を見渡した。
先程まで激闘を演じていたとは思えないほど静かな気配に包まれたそこには、風で草木が揺れる音と鳥の囁き以外何も聞こえない。
「………」
暫く黙って佇んでいたエースは、鉄パイプを握り直し二人が駆けていった方へと向かった。
***
「ルフィ、大丈夫か?」
「だ、だわっでぇぇええ、…えっ、エースぅぅうう゛う゛……
おで…おで……ぇ、っ……」
手当を終えたというのに泣き止まないルフィにサボは途方に暮れていた。
もう追手はこない。エースとも何とか無事に合流できた。
それなのになぜ泣き止まないのか。
「ごわ、ごわがっ……!じぬがと……っ、
えーすぅぅううごべ……ごべぇええん……!」
「怖がるか泣くか謝るかどれかにしろよ。
……あーもう、エース!」
とうとうエースにヘルプを投げかければ面倒そうな視線を向けられた。
合流してからこっち、ルフィが泣きわめくのもそっちのけで黙々と鉄パイプの修理をしていたがもうとっくに終わっているのに気付いていないとでも思っているのか。
「さっきから名前呼んでるだろ。ちょっと相手してやれよ」
「……ちっ。おい泣き虫」
エースが不機嫌そうに声を掛けるがルフィは泣き止まない。
それにさらに苛立つようにエースは舌打ちすると口を開いた。
「おれは泣き虫は嫌いだ」
「……っ!!」
ぴたりと泣き止む。それでも油断すればすぐに泣き出しそうなその表情にある意味感心した。
よくエースの一言だけで泣き止めたものだ。