第85章 雨降って地固まる
「おい、どうすんだエース!このままじゃあいつ死んじまうよ…!」
「うっせェ…!分かってる!!」
それはいつもの日課をこなした後のことだった。
とうとうエースの後を追いかけることに成功したルフィは、エースが強奪したブルージャムのお宝の場所を吐かせるために連れて行かれてしまった。
ルフィがしゃべってしまう前にと急いでお宝を移動させた二人だったが、いつまで経っても海賊共が探しに来る気配がない。
不審に思って様子を探りに行った二人が見たのは、ロープで宙吊りにされとげ付きグローブで殴られながらも言わねぇと口を閉ざすルフィの姿だった。
「なんであいつ話してねぇんだよ…!」
痛い痛いと泣きわめきながら、それでも場所を吐こうとしないルフィにエースは内心怒りがこみ上げる。
あれだけ嘘が下手で、泣き虫のくせに何をそんなに意地を張っているのか。
いくらゴム人間とはいえ、あのトゲ相手では意味がない。
このままではサボの言う通り死んでしまうだろう。
それを本人は分かっているのか。
「……言わ、ねぇ……」
消え入りそうな声を絞り出しそれでもルフィは口を割らない。
「言ったら……エースに許してもらえねぇ……
もう…一緒にいられねぇ……
そんなの、嫌だ……!」
まさかの言い分に絶句する。
あれだけ冷たくあしらっていて。
それでも一緒にいたいとあいつは言うのだ。
___そりゃあきつい言葉を投げかけられれば傷つくし、避けられればショックだし、撥ね退けられる手は痛むけど。
かつてどうしておれを恨まないんだと問い詰めたときの水琴が脳裏に浮かんだ。
あの時あいつはそんなことできるわけないと笑った。
怪我をして心配したと。
無事でいて嬉しいと。
向けられる眼差しは、今まで味わったことのない温もりで満ちていて。
___おーいエース!
___待ってくれよー!エース!
あいつと同じ。
ただ真摯に、まっすぐに自分を求めてくるもので。