第85章 雨降って地固まる
火加減を見ながら鍋をかき回し、お玉で一掬い。
思った通りの味加減に目を細める。
昼の準備を無事に済ませた水琴は知らせるためダダンの部屋を覗く。
余談だが、ここで世話になることになってから水琴はダダンの部屋で寝泊まりをしている。
男所帯のため大部屋で寝かせるわけにもいかず、初期の頃はエースとも険悪だったため他に選択肢がなかったからだ。
今ならエースにお願いすれば部屋を使わせてくれそうだが、ルフィもいるしもう少ししたらサボも居候するためさすがに狭いだろう。
今のところダダンの部屋で困ることもない。
「ダダン、お昼出来たよー」
「あぁ分かった」
「ねぇみんなは?」
「まだあの小僧探し回ってるよ。ったく、ガキ一匹探すのにいったいどれだけ時間食ってんだい」
「え、まだ?」
今日も今日とて朝からエースを追って家を飛び出していったルフィ。
いつもなら捜索隊が出されてすぐに保護されるのだが(大抵エースの妨害にあって森のどこかで行き倒れている)今日はまだ見つかっていないらしい。
もう昼だ。すでに四時間は経っている。
いくらゴム人間で多少のことでは怪我はしないとはいえ、森には川もあれば泉もある。
溺れていたらと思うと急に不安が付き纏い始めた。
「大丈夫かなぁ…」
「心配なら飯呼ぶついでにお前も探しに行きな」
「そうだね。そうする」
エプロンを取り外へ出る。
「どこまで行ったんだろう…」
ルフィの居場所を探すために風を飛ばす。
森の中に意識を向けながら、水琴は意識の片隅で首を傾げた。
そういえば、さっきもうすぐサボが居候すると思ったが。
___どうしてだったっけ…?
疑問は解消できないまま、水琴の意識は風に乗って森を駆けた。