第84章 ルフィ
頑なに拒否をするルフィにどうしたもんかと頬に手を当てる。
ルフィが山賊に良い印象を持っていないのは分かる。
しばらく共に過ごせば違うと分かってもらえるだろうが、今のルフィに受け入れろと強制するのも酷だろう。
かといって一人で入ってもらうのも少し心配だ。
うーむと悩む水琴をじっと見上げていたルフィは良いことを思いついたとばかりにぱっと顔を輝かせた。
「じゃあ水琴が一緒に入ってくれよ!」
「……私?」
「村でもマキノが一緒に入ってくれてたんだ」
マキノとは確か酒場の女主人で、ルフィの姉代わりのような人だったろうか。
小さい頃から知っている弟分なら、七歳くらいでも一緒に入るのはそこまで不自然ではないとは思う。
能力者になったばかりで溺れる危険もあるなら尚更だ。
だがしかし。
水琴にとってのルフィはグランドラインで初めて出会った十七歳の印象が強いわけで。
たとえ今は七歳だとしても、流石にお風呂は抵抗がある。
どう傷付けずに断ろうかと今度は違う方向で頭を悩ませた水琴の視界に、期待した目で見上げるルフィが入り込んだ。
可愛い。
「よし!一緒に入ろうかルフィ!」
「やった~!」
まぁバスタオル巻いとけばいいし。
これからも必要なら水着買えばいいし。
ほんの僅かにあった抵抗はあっさり吹き飛び、水琴は喜ぶルフィの手を引き立ち上がった。
「風呂で海賊の話聞かせてくれよ!」
「いいよ。何がいいかなぁ」
はたから見たらまるで姉弟のように、二人は手を繋ぎ帰路に着いた。