第14章 異世界の民
じりじりと熱い日差しが肌を焼く。
洗濯物の陰に避難しながら、水琴は汗を拭った。
「よし、洗濯終わり!」
現在モビーディック号は夏島の海域に入り、連日30度を超える猛暑日が続いていた。
おかげで洗濯物がよく乾く。
風にはためく洗濯物を満足げに見やり、水琴は用意していた水筒を一気に飲み干す。
適度な水分補給は大事だ。
油断しているとすぐに熱中症になってしまう。
あまり大した事も出来ていないのに、ここで倒れたりしたらそれこそ申し訳ない。
モビーの居候になってから三ヶ月。
いまだに異世界の情報は見つからない。
「島が見えたぞーー!!」
マストに上がっている見張りのクルーが声を上げた。その声につられて水平線の向こうに目を向ける。
ぼんやりと小さく島の形が見えてきた。
「あれが……」
「夏島レビール。この辺り一帯の交易中継地さ」
いつの間にか背後にイゾウが立っていた。いつもいつも気配を消して近づくのは心臓に悪いので勘弁してほしい。
「大体の物は揃うが、海軍の基地もあるから俺らにとっちゃ面倒なもんさね」
「あぁ、みなさん有名人ですもんね」
「残念だが、今回は賞金掛けられてる奴は留守番だなァ」
ほォら筆頭が来やがった、とイゾウが言うのと同時に甲板に影が出来た。
「水琴!島だぜ島!!」
「エースさん」
「うまいもんたくさんありそうだな!一緒に見て回ろうぜ」
「何言ってんだ、お前は留守番だエース」
「なんでだよっ?!」
猫のように軽やかに水琴の横に着地し、上陸してからのことを嬉しそうに語っていたエースはイゾウの一言にがびん!とショックを受ける。
「なんでって、朝の会議聞いてなかったのか。今回は隊長クラスはみんな留守番だってよ」
「あー、そういや言ってたような…」
「デートがおじゃんになって残念だったなァ」
くっくっく、とイゾウが楽しげに笑う。デートじゃねェよ!とちゃかすイゾウにエースがむきになって返すのを微笑ましく見つめる。
しかし…と水琴の中に疑問が浮かぶ。
エースが一緒に下船できないとすると、一体私は誰と街をうろつけばいいのだろう?