第84章 ルフィ
「どうしてあんな所に居たの?」
「そうだ!聞いてくれよ、エースの奴、おれが友達になろうって言ったらあの木落としてきたんだ!」
全く!とご立腹の様子のルフィの言葉になんとなく予想がついていた水琴は遠い目をする。
「……うん、とりあえず帰ろっか」
「やだ!!」
今からエースを追うのも難しいし、追いついたとしてもエースが素直に受け入れるはずがない。
怪我はないが泥だらけのルフィを連れて帰ろうと水琴が腕を引くとルフィはばっとその手を払った。
「山賊の家になんか帰らねェ!」
「え、ちょっとルフィ!!」
そのまま駆けだしたルフィの後を追う。
ちょこまかと木々の間を行くルフィの後を追うのは意外と骨が折れた。
「ねぇルフィ待って!」
「やだ!おれは海賊になるんだ!」
追ってくる水琴に対してルフィは怒鳴る。
後ろを振り向くわけだから、自然前方への注意は疎かになる。
すかっ
駆けていたルフィの足が空を切った。
「ルフィ!!」
突然現れた崖にその身を放りだすルフィ。
「うわぁああ?!?!」
「___っ!!」
叫ぶルフィに向かって水琴も躊躇なく地を蹴った。
ぎゅっとその小さな身体を抱きしめる。
「水琴?!」
「大人しくしてて!」
ごうっ、と巨大な風が水琴を中心に巻き起こる。
落下の速度をルフィに負担がかからないように弱めながら、水琴はふわりと地に足をつけた。
風でボサボサになった髪もそのままに、水琴の腕の中でぽかんとルフィは口を開ける。
「間に合ってよかった……」
「____す、」
「ん?」
「すっげーー!!!」
ほっと息を吐いた水琴をキラキラとした眼差しで見上げるルフィ。
「お前空飛べんだな!!」
「飛ぶっていうのとは今のはちょっと違うけど、まぁ……」
「すっげーな!かっちょえー!」
___あれ、デジャブ。
某砂漠の国で同じような感想を叫んでいたルフィを思い出す。
どうやら変わってないのは笑顔だけではないらしい、と水琴は苦笑を浮かべる。