第84章 ルフィ
「お前も山賊なのか?」
「うーん。今はね」
「今はって?」
「元々海賊なんだけど、休業中なの」
「へェ、海賊なのか!すっげェ!」
海賊と聞きルフィは目をキラキラとさせる。
「なァ、じゃあシャンクスとかも知ってんのか?今までどんな冒険を…っ?!」
嬉しそうに口を開いたルフィの顔にべちゃ、と何かが飛んできた。
びっくりしたルフィが慌てて頬を擦る。
「……うげ、きったね!」
べっとりと付着した唾をふき取り、ルフィは飛んできた方向をきっと睨んだ。
同じように水琴もそちらへ目を向け、小さな姿を見つけやっぱり、と眉を下げる。
「エース」
獲物の上に座り込んだエースがじろりとルフィを睨みつけている。
完全に威嚇モードだ。
「お帰り」
「………」
水琴の言葉にも返事せず、ぷいとエースは顔を逸らす。
「おォエース。帰っておったのか。ルフィ、そいつはエース。お前の三つ上じゃ。これから一緒に生活するんだから、仲良くするんじゃぞ」
エースに気付いたガープがルフィへエースを紹介した。
その言葉にエースではなくダダンたちがざわめく。
「ちょ、ガープさん!まじで……?!」
「大まじじゃ」
「エースだけでも手一杯だってのに、更にあんなガキまでなんて!」
「なんじゃ、なんか文句あるのか」
「「ありませんっ!!!」」
それじゃあよろしく頼むぞ!とガープはルフィを置いて去っていってしまった。
その背をどんよりと見送るダダン達。
「おい!お前……」
獲物から飛び降りエースは黙ってルフィの横を通り家へと入っていく。
話しかけようとしたルフィはさっさと消えてしまったエースを見てなんだあいつ、と呟いた。
「エースがごめんね」
ハンカチでルフィの顔を拭う。
「こんなん気にしてねェよ!本物の海賊は、小せェことは気にしないんだ!」
一瞬ムッとした顔もすぐに笑顔となる。
精一杯憧れのシャンクスを真似ようとしている姿に思わず頬が緩んだ。